それからえんぴつ

学校。

 ばっかじゃねーの。

 妙に冷めた目で彼女を見やる。場所は学校。フザケタ男子の声に、激昂(というか、ヒステリーを起こしているようにしか見えない)した彼女は、荷物をまと めている。

「帰ってやる」

 ぶつぶつと呟いている。ああ、ムカツク。ばっかじゃねーの。
 帰りたいなら、見せしめみたいに荷物まとめてないで、とっとと帰ればいいじゃないか。とっとと家に帰って、親に泣きつけばいいじゃないか。何故そうしな いのか、自分には理解できない。先生やらクラスメイトやらにかまってほしいのだとしたら、大間違いもいいところだ。

「ちょっと。三宅さん。どうしたの」

 ほら。のろのろしてるから、先公が現れた。

「……」

 だんまりか。いいじゃない。最後まで貫けよ。

「ちょっと、みんな、三宅さんどうしたの? みんな見てたんでしょう?」

 答えない三宅にイライラして、クラスメイトに問いただす担任。その中に自分が入っているということに、虫唾が走る。小さな町の学校で一緒になったとい う、たったそれだけの関係で、何故ともだち扱いされねばならないのだろう。

「アタシ見てましたぁ〜」

 おちゃらけた調子で、告げ口をする奴。続く状況報告に、吐き気がする。
 善人ぶった担任は、“犯人”を問いただす。三宅も、泣いてないで帰ればいいじゃないか。先公の目は今、“犯人”しか捕らえていないというのに。
 延々と授業を潰してまで続く説教に、本気で吐き気がしてきた。つわりって、この状態が続くのだろうか。どれだけつらいことだろう。耐えるため、暇つぶし がてら机の下で本を読んでいたら、こちらにまで火の粉が飛んできた。全く勘弁して欲しい。

「ごめんなさい」

 “犯人”が謝罪して、すべて終わり。それだけのために、大切だと謳う時間が、授業3コマ分も消えた。
 全く、ばかばっかりだ。三宅も、黙っているのかと思ったら、途中から涙ながらに、相手が悪いという趣旨の事を述べた。最後まで、帰らなかった。

 胸のうちでこんなことを考えている自分こそが、一番ばかなのだろうけれど。

2007年10月13日 野津希美

あとがき

 思いっきり私視点の話です。わざわざ悪口言う奴も、言われて机に突っ伏して泣く奴も、告げ口する奴も、ことを荒げる先生も、だいきらい。理解できま せん。私は、荷物全放置で学校から走って帰宅したことがあります。やろうと思えば、出来るものです。
 学校のやることの意味の無さ。それに対する考えを突っ込んでみました。